product story 製品ストーリー

古の鐵づくりを知る たたら製鉄操業体験

 

皆さまは「たたら製鉄」をご存知でしょうか。

たたら製鉄とは、砂鉄を原料、木炭を燃料として鉄を精製する日本古来の製鉄法です。そこから生み出される玉鋼は現代の技術をもってしても再現不可能な程の純度を誇り、現在も日本刀の原料として使われています。

ちなみに、たたら製鉄は映画「もののけ姫」にも登場します。女性たちが「たたら」と呼ばれるふいごを踏むシーンが記憶にある方は多いのではないでしょうか。

 

そんな歴史あるたたら製鉄を一般の人が体験できる「田部家のたたら吹き〜2021年春季操業〜」(株式会社田部様主催)が5月29日~30日にかけて行われ、5名の社員が参加させていただきました。「鉄を扱うメーカーとして鉄づくりの歴史を学びたい」という想いで臨んだ体験の様子を、本記事でレポートしたいと思います。

 


たたら製鉄の歴史

たたら製鉄は、約1400年前から良質な砂鉄が採れる島根県奥出雲地方で盛んに行われていましたが、明治以降の産業革命を機に高炉による近代製鉄に置き換わり、大正時代には完全に途絶えてしまいます。その後日本美術刀剣保存協会が、1977年(昭和52年)にかつて使われていた施設でたたら製鉄を復元させ、現在に至るまで操業を続けています。

 

今回参加させていただいた「田部家のたたら吹き〜2021年春季操業〜」の主催は株式会社田部様です。その前身である田部家は、かつて製鉄業の中心的存在であった松江藩鉄師御三家のひとつでした。1802~1825年のたたら製鉄全盛期、田部家は年間を通してほぼ毎日操業(1回当たり3昼夜で年平均87回操業)を行っていましたが、先述の理由により衰退し1923年(大正12年)に最後の操業を迎えます。しかし、その後約100年の時を経た2018年5月、たたらの文化を発信し地域振興につなげる「たたらの里づくり」プロジェクトによってたたら製鉄は復活を遂げます。現在は春と秋の年に2回定期操業を行われており、縁あって5回目となる今回の操業に参加させていただく運びとなりました。

 

操業開始

火入れ神事

 

出雲大社から授かった御神火をお供えし、操業中の無事と成功を祈願します。

 

砂鉄投入

 

15時、いよいよ体験がスタートです。

こちらの炉で木炭を燃焼させて砂鉄を還元することで、鉄を生み出します。

 

 

 

まずは砂鉄の投入です。長い柄の付いた「たねすき」と呼ばれる道具で炉の中に砂鉄を入れていきます。入れる砂鉄の量やタイミングは、炉の状態を見て判断されます。
指示される場所に砂鉄をまんべんなく落とさなければない為、たねすきを傾ける角度調節に苦労しました。

木炭投入

 

手箕を使って燃料の木炭を投入します。

この砂鉄と木炭の投入が操業のメインとなる作業で、夜通し行います。投入サイクルは終盤に進むにつれ段々と早くなっていきます。

 

 

木炭は火付きが良くすぐに高温になる松炭を使います。合間の時間に鉈で適度な大きさに割ったものを投入(合計718kg)するのですが、この作業をすると炭の粉で体中が真っ黒になります。

 

ノロ出し


砂鉄と木炭の投入を開始してから数時間後 砂鉄に含まれる不純物「ノロ」を排出します。

薄暗い中、真っ赤に熱されたノロが流れてくる光景はとても美しいです。

 

鉧出し

 

15時の操業開始から19時間経った翌朝10時頃、いよいよクライマックスを迎えます。炉を壊し、内部に出来上がった鉄の塊「鉧(ケラ)」を取り出します。取り出す瞬間は凄まじい熱気に包まれる為、作業をする人は耐熱服を着ています。


 

取り出したばかりの鉧は深部が煌々と輝き、まるで生きているようにも見えます。

今回は砂鉄647kgと木炭718kg投入し、160㎏の鉧が出来上がりました。砂鉄の歩留まりとして25%は良い数字とされているそうです。

 

 

 

操業で出来上がった鉧の一部は、後日小さく割って参加者1名ずつに贈呈していただきました。

今回の鉧の出来は大変良かったそうです。微力ながら自分たちが携わったと思うと感慨深いものがありました。間近で見る鉧は様々な色の輝きが混ざっていて本当に神秘的です。

 

体験を終えて


 

操業体験の合間には、五寸釘を使ったペーパーナイフ作り体験のお楽しみもありました。

 

 

鉄の歴史博物館、田部邸、そして菅谷たたら山内の見学もさせていただきました。菅谷たたら山内は日本で唯一現存するたたら製鉄の遺構で国の重要有形民俗文化財に指定されています。

 

 

今回の体験を通して、縁のある地域(弊社の現社長と先代社長は島根県出雲市出身)にこのような素晴らしい伝統文化があったことを身をもって学ぶことができました。特に、現代の技術をもってしても作ることができない品質の鉄を生み出すたたらの技術を、長年かけて編み出した昔の人々の情熱と技術には驚きしかありません。

何もしなければ失われていくばかりの伝統文化ですが、これを残していく為にはまず知ってもらうことが大切だと感じています。その「知る」という事において、この体験は大変意義深いものとなりました。この記事を通してさらに多くの人に魅力が伝われば嬉しい限りです。

興味を持った方は次の秋季操業(10月30日~31日予定)にぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

最後に、このような貴重な体験をさせていただいた株式会社田部様に改めて御礼申し上げます。

 

リンク

今回参加させていただいた「田部家のたたら吹き〜2021年春季操業〜」の詳細はこちら(外部リンク)

■株式会社田部 たたら事業部 ホームページ(外部リンク)

■奥出雲前綿屋 鐵泉堂 Instagram(外部リンク)